そして、莉笑の手を取り、床に膝をついた。


まるで、お姫様の手にキスをする王子様の様に。



「それは、莉笑のことが好きだから」



ほんのり赤い顔でそう言って、莉笑の手に唇を乗せた。

「っ?!」


莉笑は手を慌てて振り払い、


「・・・・・・すいません」

小さな声でつぶやき、走って惟人の部屋を出て行った。


「・・・・・・」

惟人は走るその背中を見送りながら、誰もいない部屋で言葉を漏らした。

「・・・・・・あと、一つ」


高くなってきた太陽の光が、カーテンに遮られて床にちらついていた。