「佐伯さん…」

振り返った女の子は、隣りのクラスの佐伯 理沙だった。


リサ…名前のままだ。
間違いなくリサは佐伯さんだ。


「小町…さん?
帽子被ってるから、よく分からなかった。
カラオケしに来てるの?」

佐伯さんとは2年生の時に同じクラスだったから面識があるというよりは、よく知っている人と言って良い。

まさかあの5人に、こんな身近な人間が混じっていたとは…
世の中広い様で狭い。


私はそのまま会話をしながら、佐伯さんとエレベーターに乗り込み3階で降りた。

紫と白の間接照明だけの薄暗い廊下を少し歩くと、5号室の前で佐伯さんが立ち止まった。


「私ここだから、じゃあまた学校でね」

扉を開けて、中に入ろうとする佐伯さんの後を私も着いて行く…

驚いて振り返る佐伯さんに、私は帽子を少し上げて表情が見える様に言った。


「私の名前覚えてる?
あ・ゆ・み…よ」


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