「彩香…」


私が顔を上げると、美玖も振り返ってそばに立っている彩香を見上げた。

彩香は美玖を奥の席に押し込めると、自分が私の正面に座った。

「2人とも塞ぎ込んでいたら何も進展しないよ。
まだやってない事があるんじゃないの?」


彩香の挑戦的なその言葉に、美玖が突っ掛かった。

「そんな事言ったって、江藤が帰って来なきゃどうにもならないでしょ!!」


あ…そうか!!


「滝口…」

「そうよ。
2人とも本人にこだわり過ぎて、もう1人の重要人物の事を忘れてるよ」

彩香が私を見つめながらニコリと笑った。


ようやく気付いた美玖が、彩香の背中をバシっと叩いた。

「彩香もたまには良い事言うじゃない!!
確かに当時付き合っていた相手なら、何か理由を知ってる可能性はあるよね!!

確か住所もどこかにあったと思うし」



私達3人はすぐにそこで各々の役割を決め、別れることにした。


私はユキに情報を渡す為に商工センターに…
美玖は滝口に会いに…
彩香は残って江藤を待つ事になった。


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