私は店舗正面の中央にあるガラス扉に着けられた木目調の取手を掴むと、体重を前にかけながら力強く開けた。


店舗の中に入ると、入口のセンサーが反応して奥の方でチャイムが鳴った。

店舗内は意外と広く、街角にある通常のコンビニほどの売り場があった。
しかし呉服屋とは名ばかりで、商品の大半は年配向けの地味な洋服だった…



「いらっしゃい」


30秒ほどすると、奥で物音がしてスマートな年配の女性が出てきた。


少し目がつり上がり、整った顔立ちだが冷たい印象を受けるその女性は、江藤がそのまま女性になった雰囲気だ。

江藤の母親と思って間違いないだろう。


私はその女性に話掛けた。

「あのすいません…
私は江藤君のクラスメイトの、小町と申します。
江藤君はいらっしゃいますか?」


その女性は笑顔のまま私を見つめると、あっさりと私の期待を裏切る事を口にした。

「まぁ隆一の…
生憎今日はね、塾の模試があって7時過ぎないと帰って来ないのよね。

連絡もつかないし…」


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