私は塀に沿って走りながら、名前を口の中で繰り返していた。
住職は確かに、"ヨシコ"と言った…
ヨシコ…
ヨシコならミコであるはずがない。
ならばもう…
突如私は猛烈な虚脱感に襲われ、墓地を目の前にして立ち尽くした。
もう今更お墓に行っても無意味ではないのか?
……でも、ここまで来たんだから…
様々な思いが頭の中を交錯したが、一応確認だけはしておく事にした。
私は重い足取りで再び歩き始め、江藤家の墓を探して墓地を奥へと進んで行った…
墓地は500区画ほどありかなり広く、右端の列だけでも20区画近くあった。
その一つ一つの名前を確認していくと、ちょうど真ん中を過ぎた辺りで江藤家という名前を見付けた。
「ここだ…」
手を合わせた後で、何も期待せず機械的に墓石の横に掘られている黒い文字を読んだ。
その没年月を確認すると…
「3年前の6月9日…
6月9日!!」
私は余りの驚きに思わず叫んだ。
そこにはあの集団自殺と同じ年月日が、しっかりと墓石に掘られているではないか!!
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