「何か御用でしょうか?」

扉が開いて顔を出したのは、60歳は十分過ぎた法衣を纏った僧侶だった。

どうやらちょうど昼時で、昼食を摂る為に住職が社務所に戻って来ていた様だ。


「あの…
こちらに江藤さんのお墓があると聞いたのですが、どこに行けば良いのか分からないので…」

私の言葉を聞くと、住職は両手を胸の前で合わせ一礼した。


「それはそれは…
よくお参り下さいました。
江藤様のお墓は本堂の裏側にある墓地の、一番左端の列にございます…

私がご案内致しましょう」

そう言うと、私を案内する為に外に出ようと足を踏み出した。


それを見て驚いた私は、住職の前に回り込むと両手を出して必死に止めた。

「い、いえ結構です。
自分で探しますから…

ありがとうございました」


「そうですか?
では、ここから真っ直ぐ塀に沿って歩いて行って下さい。
そうすれば、裏側の墓地に出ますから…

さぞヨシコさんも、お喜びになる事でしょう」

住職は私を見つめながら微笑んだ。



ヨシコ…?


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