私はその話を聞いているうちに、持っていた缶コーヒーを強く握り締めていた。
間違いなく、その話は本当だ。
美玖の姉の態度もかなり変だったし…
そもそも、集団自殺で亡くなった生徒がいるなら、少しくらい噂話があっても良いはずなのに、私はこの3年間一度も聞いた事がない。
何者かが、意図的に噂話を封印したようにしか思えない…
「それで…
集団自殺で亡くなった生徒って、一体誰なんですか?」
やはり、間違いなくその生徒がミコだ。
その生徒が誰かさえ分かれば…
私は加奈江さんの方に身を乗り出して、返事を急かす様に目を見つめた。
「知らない。
そんな込み入った話までは知らないのよ…」
「そうですか…」
見えかけた希望の光が消え、私は意気消沈した。
あと少しなのに、もう少しという所まで来ているはずなのに、ミコに辿り着けない…
私は話を聞き終えると、老婆と加奈江さんに深々と頭を下げお店を出た。
携帯電話を取り出し時刻を確認すると、既に10時30分になっていた。
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