「娘さん…
いくら言っても無駄だよ。
その人は何も話してはくれないよ…」

門の向こう側の道路を偶然通り掛かったであろう老婆が、腰を屈めた姿勢で私の方を見ていた。


「どういう事ですか?」

私は、その小柄な老婆に歩み寄りながら聞いた。


門から道路に出て老婆のそばまで行くと、老婆は私を見上げた。

「思い詰めた表情をしているね…」



老婆は暫く私を見つめた後、なんとか聞き取れるほどの声で話し始めた…


「ここの娘が、3年前に亡くなったのは知ってるね?
その死に方が普通ではなかったんだよ…」

確かに集団自殺ならば、普通の死に方ではないが…


「あれはちょうど、3年前の6月の終わり頃だったと記憶しているけど…

夜に風呂場で溺死したんだよ」

え…
6月末…溺死?


「しかもね…
首にヒモで縛った様なアザができていたらしい。

明らかに変死だったが、どんなに調べても溺死以外の何ものでもなく、事故死という事になった…

知りたかった事はこれで良いかい?」


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