最初は別に江藤が何をしていようが興味は無かったが、聞き流されたかも知れないと思うと意地になってしまう。
私は今度はごまかされない様に、肩を叩き振り向いてから聞いた。
「江藤はここで何をしていたの?」
今度ばかりは流石に聞き流せなかったらしく、一瞬顔をしかめたものの口を開いた。
「墓参りだよ、身内のな。
最近何かと忙しかったからな、今日は塾が早かったし寄ってみたんだよ…」
「ふーん…」
その返事を最後に、お寺の門に取り付けられた灯だけが照らす薄暗い歩道で、暫く沈黙が続いた…
別にそれ以上聞く必要もないし、それ以上聞く事もなかったからだ。
「じゃ、じゃあな小町…
お前も一応女なんだから、夜道は気を付けろよ」
江藤は沈黙を断ち切る様に唐突にそう言うと、背を向けて歩き始めた。
江藤の言葉にハッとして、携帯電話を取り出し時刻を確認すると既に20時を過ぎていた。
「ヤバい…
これは早く帰らないと」
私はさっきまでよりも歩くスピードを上げ、駅へと急いだ。
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