電車の中は真冬だというのに、暖房と湿気で梅雨時期の様な状態だった…
私は乗降口付近に立ち、満員の車内に背を向ける様に曇った車窓をぼんやりと見ていた。
何か窓に水滴が着いている様な気がしたが、余り気にしなかった…
8分ほどで基町駅に到着すると、私は下車する人達に背中を押される様に下車した。
足早に先を急ぐ通勤客の波に飲まれ慌ただしく改札を抜けると、不意に妙な気配を感じた。
「この感じは…」
するとその瞬間、両足首のアザに激痛が走り、前のめりにバランスを崩した!!
早足で歩いていた私は転倒する事を自覚し、転倒場所に視線を落とした。
あ…
なぜかちょうど私が転倒するであろう場所に、30センチはある看板の金具が、私の方を向いて飛び出していた!!
尖った金具は、このままでは間違いなく顔に刺さる!!
しかしそれが分かっても、もう避ける事は不可能だった。
私は歯を食いしばり目を閉じた…
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