私はまるで暗闇に放り込まれた子供の様に、逃げたくても足が震えてその場から一歩も動けなかった。
そんな私を嘲笑うかの様にミコは更に囁く…
「大丈夫…
まだ大丈夫よ。
今夜にでも会いに行くからその時までは…」
私は声すら出す事が出来ず、絶対的な恐怖の前に成す術もなかった。
そして時計の音楽が鳴り止むと同時に、まるで糸が切れた操り人形の様に時計台の下に崩れ落ちた…
ダメだ…
もうどうする事も出来ない。
周囲の人々は私の事など全く気付かず、道路際に群がり倒れているショウゴを見ていた。
やがて救急車が、大きなサイレンと共に赤いランプを回転させながら到着し、ショウゴを連れ去った。
あれではもうショウゴは…
「俺見てたけどさあ、あれは絶対自殺だよ。
あの人の周りには人がいなかったし…」
不意に耳に飛び込んでくる若い男性の声…
自殺じゃない!!
自殺じゃないのに…
分かった。
あの背中のアザは、突き飛ばされる暗示だったんだ。
つまり飛び込み自殺に見せ掛けて殺すと…
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