「蒼ちゃん、持ってって」

「ねえ、ともは?」

「え?」

「なんでともは俺が好きなの? 顔?」

「…………まあ、顔はいいと思うけど」

「ねえ、ともの理由は?」

「んー……蒼ちゃんと一緒」

「えー、ちゃんと言ってよお」


……しつこい。


今のだってけっこう勇気を出して言ったってのに。


「ねえ、ともぉ」


リビングにお茶を持っていく間も、蒼ちゃんはひたすら欲しがった。


あたしが言うこと得意じゃないの知ってて言ってるでしょ。何の拷問だ。


あたしは台所に引っ込んで、着いてきた蒼ちゃんの腕を掴んでその耳元でぼそりと呟いた。


「──!?」


珍しく蒼ちゃんが顔を真っ赤にして声にならない声を出して立ち尽くした。


そんな蒼ちゃんを尻目に、あたしはリビングに戻った。


まさかあたしが口にするとは思わなかったのだろう。


なんで、という答えにはならなかったけどまあいいや。


『愛してる』


それが全てだ。







END.