「蒼ちゃん」

「ん?」

「なんであたしが好きなの? 幼なじみだから?」


ずっと聞きたかったことだった。鳴海さんの件といい、蒼ちゃんに似合う女は他にいる。わざわざ地味で人見知りなあたしを選ばなくてもいいだろう。そもそもなぜそんなあたしに惚れたのか。


「愚問だねえ。まあそりゃ、幼なじみってのは大きいよ。他の人が知らないともをたくさん知ってるしね」

「不十分」

「欲しがるなあ。じゃあ言い方変える。ともが幸せそうに笑うとこも、泣き顔も、感じた顔も、照れた顔も、寝顔も寝起きの顔も、化粧っ気のある顔もすっぴんも、なんなら体中のほくろの位置も、俺は全部知ってる」

「…………まだ午前中なんですけど」


聞いているこっちが恥ずかしいです。


「他の女にはそんなの見せられたって何も感じないけど、ともだったらそれら全部が愛しいって思うんだから、もう仕方ないでしょ」

「……そうですか」


あたしは急須を持ち上げて軽く振った。


「これで満足ですか、奥さん」と蒼ちゃんが聞いてきたから、あたしは「……ソウデスネ」と答えておいた。


「ふはっ、なぜかカタコトだし」


あたしは無視して人数分のコップにお茶を注いだ。