『蒼大はずっと私の傍にいてくれました。なんで彼女じゃないのに、そこまでやってくれるの? って一度だけ聞いたんです。私の傷を癒すために抱くなんて、普通しませんよ。蒼大は、ともも大事だけど理央も大事だって言ってました』


あたしは笑うことができなかった。ただ、心の中ではなんだその理屈と嘲笑するしかなかった。


蒼ちゃんは最高に優しくて、それゆえに最低な男だ。


あたしも鳴海さんも、同じことを思った。


鳴海さんはそれから何も言わなかった。蒼大をくださいとも、蒼大と別れてくださいとも、一言も言わなかった。


お時間を取らせてしまってすみません、とだけ言って去っていった。


ただ、それだけであたしは理解した。


もう、あたしは用済みだ。


蒼ちゃんにも、鳴海さんにも。