傍から見たらなんてことないように見えたと思う。ただの仲のいいカップルと見えていたかもしれない。


他人から見れば、ほんのわずかにしか見えていなかったであろう小さな小さな歪み。


でも、あたしと蒼ちゃんはその変化に確実に気付いていた。


そして、あたしが感じていた変化は、願わずともあっちが突きつけてきた。


あたしは見たくないとずっと目を背けてきたのに。


「あの」


季節が巡って三年生になってから少し経った頃、あたしは思いがけない人物と接触した。


あたしは自分の顔の表情筋が強張るのを感じた。


蒼ちゃんの元セフレの、鳴海さんだった。


会話を交わしたことはないけど、お互い面識はあった。皮肉にも蒼ちゃんのおかげで。


「あの、今大丈夫ですか?」