言葉にしなくてもわかっていたから、蒼ちゃんはあえて口にして真実を語らなかったのだと思う。


あたしも聞かなかった。同時に、聞くことが怖かった。


聞いて蒼ちゃんが離れることを恐れた。そうならないかもしれないとも思ったけど、100%そうだと確信はできなかった。


今の現状を壊すことを恐れた。何も知らないことほど楽なものはない。


お互い依存していたことはわかっていた。だからこそ余計に離れたくなかった。


そして、目を逸らすことが後々めんどくさいことになるだろうとは頭の隅で理解していた。


責任はお互いにある。


そんなことが長く続いた。少なくとも、あたしと昌人が付き合っていた期間以上は確実に。


蒼ちゃんに依存していることはわかっていた。無論、蒼ちゃん自身も。


喧嘩をしたと言って帰ってくる頻度は最初から変わらなかったけど、最初あんなに苦しそうに歪めていた表情は、回を重ねるごとに薄れていった。


慣れた、ということだろうか。


でも、その苦痛が全くなくなったことではないとわかっていたから、あたしは黙ってされるがままになっていた。


「……俺、ほんと最低」


事を終えてから、蒼ちゃんがあたしを抱きしめて呟いたその言葉をあたしは寝たふりをして聞かないふりをした。


歯車は既にずれていた。