それからしばらく動けなかった。


ようやく体を起こしたときは既に1時を回っていて、部屋から出ると家の中の静寂があたしの体を包んだ。


重い足を引きずって風呂に入った。


クレンジングオイルで化粧を落としてシャワーで流しながら、蒼ちゃんに触れられた感触を思い出していた。


……下手したら、あの時処女を失っていた可能性もあった。


別にあたしはクリスチャンでもなければ処女性を重んじる人間でもないから、衝動的に処女を失ったとしてもその後の人生に何か影響があるわけではないだろう。


それでもやっぱり、怖かった。


蒼ちゃんが、他人に体を触れられることが、初めてを奪われようとしたことが。


蒼ちゃんが案外ヤキモチ焼きなのは知っている。あまり興味を持っていなさそうに見えて、その内では密かに妬んでいることは意外にある。小さい頃も、あたしが他の友達と遊んで蒼ちゃんを一週間放置していたら、泣いて怒られて二週間は許してくれなかった。


それでも、今回のことは仕方ないじゃない。


決して誘惑するために行ったわけじゃないし、それじゃああたしはどこにも行くなって言いたいの? さすがにそこまでは強要されないだろうけど。


蒼ちゃんはやはり男の子なのだ。あたしとは全く違う種類の人間。そういう自覚はしてきたつもりだったけど、またその事実をまざまざと見せつけられた気がする。


あたしは蒼ちゃんに翻弄されてばかりだ。