「ごめんね、とも。俺はずるくて弱い。弱いから理央をセフレにして逃げ道を作って、それなのにともにいっぱいキスした。最低だよ。嫌わないでってさっき言ったけど、やっぱり嫌われても仕方ないって思う。だから…………」

「蒼ちゃんが完璧な人間なんて昔から思ってないよ、あたし」


あたしは蒼ちゃんの頭を撫でた。


あーあ、いつのまにか立場逆転してるし。


でも、この方がやっぱりしっくりくる。


「蒼ちゃん、昔から泣き虫じゃん。あたしの前でだけ泣いてさ。覚えてる? 5歳くらいのとき、あたしが二回りくらい大きい男の子と喧嘩して負けた後さ、蒼ちゃんその子にリベンジしに行ったの。やっぱりというか、蒼ちゃんこてんぱんにやられて帰ってきてさ、で、やっぱりあたしが慰めたよね」

「とも、そんな恥ずかしいこと覚えてんの……」

「蒼ちゃんが弱いことなんて昔から知ってるよ」


同情するわけではない。そして、蒼ちゃんがしたことは世間的に見れば許されることではないだろう。でも、人は誰しも弱くて、ちょっとしたことで間違った方向に進んでしまう。あたしだって蒼ちゃんの立場だったら、もしかしたら同じことをしていたかもしれない。


「ね、蒼ちゃん。聞いていい?」

「うん……」

「あたしのこと、好き?」


答えは言われなくてもわかった。


蒼ちゃんが、あたしが窒息するくらいぎゅうぎゅうと抱きしめたからだ。


「蒼ちゃん……苦し……」

「大好き」


あたしの耳元で低く囁いた蒼ちゃんはやっぱり泣いていた。