「ちっちゃい…………可愛い…………」


目の前の小さな命に、あたしはそれしか口にすることができなかった。


「男の子よ。とも、残念ね」


隣で寝ている母さんが笑った。


「生まれてくればなんでもいいよ。可愛いぃ…………」


あたしの指を赤ちゃんの手の平に乗せてみると、意外にもしっかりした力で握ってきた。


生きているんだ。そう実感してあたしは思わず笑みがこぼれた。


母さんが妊娠したとあたしに報告してから約半年。母さんは4人目の子供を産んだ。39歳という高齢にも関わらず安産だった。


「お姉ちゃんだよ。はじめまして…………」


19歳離れた弟。目の前の生まれたばかりのあたしの弟。


「母さん……おめでと」

「ありがと。絢と慎が後ろにいるからどいてやって」

「あれ、双子いたんだ」

「姉ちゃんどけ」

「邪魔」


大の大人並の男が二人かかって来られてはいくら女の中でも大きいあたしの体も吹っ飛ばされてしまう。


あたしは渋々その場から離れた。