あたしには既に独占欲というものが生まれていた。


蒼ちゃんの全てをあたしのものにしたい。それが叶わないなら、あたしに近寄らないで。悲しくなるから。


あたしはなんて惨めなんだろう。


蒼ちゃんのキスも、触れる指も、揺れる瞳も、たぶん一生忘れられないだろう。


そして、思い出す度にこうして涙を流すのだ。


感情なんて生まれなければよかった。


好きなんて自覚しなければよかった。


蒼ちゃんを男と意識しなければよかった。


一緒に住まなければよかった。


蒼ちゃんと仲良くならなければよかった。


あたし達なんて出会わなければよかった。


──あたしなんて、生まれなければよかった。


枕に顔を埋める。枕に涙のしみができていく。


こんなに悲しくなって泣くのなら、あたしなんて存在しなければよかった。


嫉妬して自分を惨めと思って消えたくなるのなら、最初からあたしなどいなければよかった。


蒼ちゃんの幸せを願って、自分の幸せをも願ってしまう。


ねえ、なんでかな。


なんでこんなに蒼ちゃんが好きなのかな。


なんであたしは蒼ちゃんを好きになっちゃったのかな。


あたしだけを見てよ。あたしだけの蒼ちゃんでしょう? 他の女になんか渡したくない。


蒼ちゃんにとってのあたしって何? いつでも手放せるどうでもいい存在? だからあんな乱暴なキスだったの?


あたしは蒼ちゃんにとって必要ない存在?


あたしは─────……