千晶の話はこうだった。





あの日、酔うとおかしくなるからと友達に言って隅で一人で飲んでいた私のもとにやってきたのが彼だった。


今まで一番大きな輪の中心にいたのに。私は驚いて声が出なかった。


彼は少し顔を赤くしていた。


『具合でも悪くなったあ?』

『別に……好きで一人になったから、気にしないで』

『ふうん』


川島くんは曖昧に頷いて、私の隣でウーロン茶を飲んだ。


『ねえ、戻んなくていいの?』

『んー? 大丈夫でしょ。もうみんな何が何だかわかんなくなってるし』


ちらりと後ろを一瞥して、へへっと笑ってみせた彼に、私も不覚にもときめいてしまった。


こりゃあ、モテるはずだ。


『それに、俺もたまには静かに飲みたいの』


そんな優しい嘘をつく彼を嫌いになる人なんかいないだろう。飲むと言ったって、そんな彼の手元にはウーロン茶しかないのだから。


『…………智子から聞いてたけど、やっぱりイケメンね』


酔った勢いもあって、私はそんなことを口走っていた。