「蒼、ちゃん? どうしたの……?」


あたしはこの時少しだけ警戒を緩めていた。


「とも、俺止まんないかも…………」

「へっ……」

「ともが嫌がるのはわかってんだけど…………」


なんだか話すことすら苦しそうだ。


「キス…………してもいい?」


蒼ちゃんが再び耳元で囁くから、カッと顔が熱くなった。


「それ以上は……しません」


後ろを振り向いて蒼ちゃんの顔を見ると、暗闇でも顔を赤らめているのがわかった。


「だって、とも無防備なんだもん。俺もう二十歳なんだから」なんて、涙目で訴えられてもこっちは困る。


キスなんて、今まであたしに許可を取ったことなんかなかったくせに。


蒼ちゃんは本当にずるい。


「それ以上、しない?」

「ん……頑張る」

「…………なら、いいよ」


蒼ちゃんのあたしを抱きしめる腕の力が強くなった気がした。


あたしの髪の毛を払って、蒼ちゃんの唇が首筋に触れた。


一瞬あたしは体を強張らせて、それをほぐすように蒼ちゃんは何度も首筋にキスを落とした。


この間と同じようなことをされているのに、不思議と怖くなかった。抱きしめられているからかもしれない。もしくは、キスが優しいからかもしれない。


蒼ちゃんの右手はあたしの指を絡めていた。