少女の目の前の床には黒ずんだ皿にのった、煮ただけのじゃかいもと色が薄く具の入っていないスープ。じゃかいももスープもすっかり冷めていたが少女は気にもとめずにただ事務的に胃に流し込んだ。


 「赤目! さっさとしな! 仕事がのこってるだろ!」

 「はぁい、ウェルダさん」


 子供特有の舌足らずな発音で返事をすると空になった皿を持ち台所に返す。その手は小さく、確かに子供の手であるのに、沢山あるあかぎれと逆剥けでとても痛々しく思えた。


 手だけではない。


 足は霜焼けで赤くなり、膝は痩せこけ、鎖骨は酷く浮き出て、唇の端は少し裂けて血が滲み、黒い髪はボサボサで光沢がない。
 満足な食事を与えられない小さな身体は酷使されて足取りはいつもフラフラとしていた。


 「やーい、やーい、赤目の踊り足〜」

 「赤目は不幸の踊り足〜」


 家の他の子供も近所の子供も、赤目の踊るようにフラフラとした足取りをそうからかった。


 それでも、例えからかわれようと、食事が少なかろうと、酷使されようと、赤目は文句一つ言わなかった。



何故なら、それが赤目の役割で、生まれてきた意味だから。



蔑まれ、苔にされ、不幸を背負う。



皆から言われつづけた言葉は少女にいきづいていたのだ。