そう言って連れて来られたのは、金魚すくいの屋台だった。
「なんで…?」
「さっきこっち見てたから。やりたいんじゃないの?」
手を繋いだまま、私を見て言う藤堂さんの瞳はやっぱりまっすぐ。
なんでこの人にはわかるんだろう…。
何も言ってないのに…。
繋がれた手をキュッと握って、小さく頷く。
「やりたいならやりたいって、ちゃんと言った方がいいよ。損するだけだから」
この人は言いたいことをちゃんと言える人なんだ…。
言い方はキツいけど、言ってることは正しい。
「あの……。金魚は好きなんですけど、すくうのは全然ダメなんです……」
ずっと黙ったままだった私は、思ってることを言ってみた。
スゴく恥ずかしいけど、口にしてしまえば意外とすっきりってことを初めて知った。
「良くできました」
小さい子みたいに、藤堂さんは私の頭をくしゃくしゃってして、私を子供扱いする。
子供じゃないのに…でも嬉しい。
また、ちゃんと言えたら褒めてくれるかな…?
「私、高校生ですよ?」
頬っぺたが熱いのには気付いてたけど、どうしても言いたかったんだ。


