フワッと甘い香りがする。
お砂糖みたいな匂い。
藤堂さんから?
「怖がられたっていうわりには、もう仲良くなったんだ?」
冷やかすように言う悟さんに対して、藤堂さんは
「早く行こうぜぇ」
とスルーした。
悟さんは笑いながらも前に進んでいく。
鳥居をくぐってすぐのところに金魚すくいの屋台があった。
どうしてもそっちの方を見てしまう。
「まずはどこから行こっか」
悟さんの声に、私は慌てて視線を戻した。
「愛、わたあめが食べたい!」
悟さんの腕にピッタリとしがみついて、愛は甘えながら言う。
その光景が羨ましく思える。
「わたあめね。優月ちゃんは?」
「あ、私もわたあめでいいです」
しまった…。
“で”じゃなくて“が”の方がよかったかな…。
言ってしまったことを後悔してもしょうがない。
私今変な顔してるのかな…。
愛と悟さんが不思議そうな顔で私を見てる。
でも藤堂さんは違った。
私の思ってることを見透かすような、そんな瞳で私を見る。


