「如何なされました、女王様」


家来は跪いた姿勢のまま、命令を待つように見上げます。


「…白雪姫を森へ連れて行け。そして殺せ」

「!」


家来は目を見開きましたが、女王は気にすることなく続けます。


「命を奪った証拠として、この箱にあれの心臓を入れてくるのだ」

「……、承知致しました」


家来は頭を下げ箱を受け取ると、命令通り白雪姫を連れ出して森に行きました。

家来は剣をグッと握り締め、ちらりと窺うように彼女に視線を向けます。

白雪姫はニコニコとしながら歩いていました。

それを目にした家来は眉根を寄せると、スッと剣から手を離し、その場で跪きます。


「あ、あの…? どうされたの?」


白雪姫は困惑した様子で彼の肩に触れようと手を伸ばしました。しかしそれより先に、家来が口を開いたのです。


「姫、お逃げ下さい」

「え…?」


伸ばした手はピタリと止まり、驚いて引っ込めてしまいました。


「私は貴方の命を奪うよう、女王様から命令を下されました」

「…」

「だからどうか、お逃げ下さい。私がこの剣を抜く前に」


キラリと刃の部分を少しだけみせた家来に彼女は一歩下がります。