「美しい姫君、私は貴方が好きです。どうか私に貴方の愛を捧げて下さいませんか?」


白雪姫は驚いたように目を丸くしましたが、次には嬉しそうに頬を緩ませます。


「…勿論です。王子様」


そう上目遣いで呟いた彼女の黒髪が、優しく風に靡かれました。


一方、その頃、いつも白雪姫に意地悪をする女王は部屋に置いてある魔法の鏡に向かって訊ねます。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」

「はい女王様、それは貴方です」


このやりとりは毎日の恒例行事でした。これを終えるといつも女王は満足そうに笑うのです。


ところがある日。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」


いつもと同じように問うと、違う返答が返ってきました。


「はい女王様、貴方はとても美しい。ですが、一番美しいのは白雪姫です」


鏡の答えを聞いた女王は顔を真っ赤にし、怒りで鏡の真横にある壁に拳をぶつけます。


「なんて憎らしいっ…!」


ギリギリと歯を噛みしめると、拳をゆらりと壁から離しすぐさま家来を呼びました。