「じ、実はだねぇ、私は人を喜ばせることが好きなんだよっ!」
「……人を?」
話にくいついてきた白雪姫に女王は頭の中を必死に回転させます。
「そうさっ! 私がつくったリンゴで、人を喜ばせたいんだっ!」
「まぁ、おばあさんがつくったの?」
「そうだ。だから私のために食べてくれないかい?」
これでどうだ、と女王は白雪姫を見上げます。白雪姫は手中にあるリンゴとおばあさんを見比べて、顔を上下させました。
「わかりました。おばあさんありがとう。頂きます」
白雪姫はリンゴに自分の唇を近づけて、小さく呟きます。
「私の願いは、愛する人と幸せに暮らすことっ!」
カプリ、リンゴを一口かじった途端、白雪姫は息が止まり、ばたりと倒れてしまいました。
「…ったく、手間をかけさせおってっ! だがこれで、邪魔者はいなくなった!」
この世で美しいのは私だっ!と、高らかに醜いおばあさんの顔をした女王は笑いました。
森の動物たちは女王がやってきたときから危険を感じていました。
彼らは思いっきり鳴いて辺りに警告しながら、全速力で小人たちを呼び戻しに行きました。
外は風が吹き荒れ、激しい嵐になりました。


