「これはねぇ、願いが叶う不思議なリンゴなんだよぉ。お嬢さんは特別だ。さぁ、願い事を唱えて召し上がれぇっ!」


これで白雪姫は終わりだっ!そう厭らしく顔を歪ませる女王でしたが、白雪姫はジッとリンゴを見つめて首を横に振りました。


「……、おばあさん、折角だけどもらえないわ」


白雪姫は手に持ったリンゴを女王に返そうとします。


「な、何でだいっ!」


女王は一瞬にして焦った顔になり、彼女を強く問いつめますが、白雪姫は冷静でした。


「私、お金持ってないんです」


白雪姫は残念そうな表情でため息をつきます。


「だから…」

「いいやっ! お金は必要ないんだよぉ!」

「……そうなのですか?」


白雪姫のそれに女王は大きく頷きます。しかし彼女の顔は晴れません。


「でも…」

「今度は何だい!?」

「払わなくていいだなんて、怪しくありませんか?」

「…」


なんということでしょう。白雪姫は女王の核心をついてしまいました。


「そ、そんなことは…」

「それにもしかしたらこのリンゴ、あの人が命令して、毒が仕込まれているかもしれません」


白雪姫は片方の手を顎にあてて呟きます。まるで探偵のようです。

女王はたじたじになりながらも諦めず、咄嗟に理由を口にしました。