怒りに狂った女王は魔法の薬を飲んで、それはそれは醜いおばあさんに姿を変えてしまいました。

それから恐ろしい毒リンゴをつくりました。


「…ヒヒヒッ! 一口でもかじれば息が止まるリンゴの出来上がりだ」


不気味な笑いをしながら女王は目を細めて愛おしそうに赤い物体を見つめます。


「これを食べさせれば白雪姫は眠りにつく。呪いは愛する人のキスでとけるが、問題ないっ!小人たちは白雪姫が死んだと思ってつめたぁい土に埋めるだろうからねぇ」


また、ヒッヒッヒッと女王は口の端をゆるりと持ち上げました。


次の日。

小人たちが山へ仕事に出掛けました。白雪姫はひとりで留守番をしています。

機会を窺っていたおばあさんこと女王は、カゴいっぱいのリンゴを持ってやってきました。

トントントン、家の扉を叩きます。


「はーいっ!」


その声は白雪姫のものです。女王はこれからのことを思い、ほくそ笑みます。

白雪姫は扉を開け、中から出てきました。


「こんにちは、お嬢さん」

「こんにちは、おばあさん」

「リンゴはいかがかい? ほうら、美味しそうだろう…?」


女王はカゴから真っ赤な毒リンゴをひとつ取り出しました。