嘘つき偽彼氏




あたしはドキドキしている胸を抑えながら
震える唇を開く。



「て、てる………てるちゃん…です」



ぼそぼそっと呟いた言葉。


ん?


ちょっと待てよ?


さささ、さっきなんて言ったの、あたし。


さ、さっきあたし
自分のこと……


「て、てる……ちゃん?」



男の子が呟くようにそう言うと
クスッと笑い出す。


あ、あたし、自分のこと
てるちゃんって言ってしまった!


あたしの顔が一気に熱くなる。


熱くて熱くて
火傷しそう。



「い、いや!その、あたし…!」


慌ててあたしは
自分のフルネームを言おうと口を動かす。


だけど
こ、声がでない…。


だって……


「あはははは!」



男の子が笑ったから。


初めて見た。


この男の子が笑うところ。


とっても
男の子とは思えないぐらいの
可愛らしくて輝いた笑顔。