「あ、そうだ」
あたしが男の子の手を握り
靴を脱いで道場の中に入ったとき
男の子は何かを思い出したみたいに
口を開いってあたしのことを見る。
「え、な、なに?」
あたしは、いっぱいいっぱいの頭で
必死に男の子に返事を返す。
「そういえば俺、先輩の名前知らない」
「え?」
いきなりの言葉に固まってしまう。
い、今
あたしの名前を聞いてくれた?
あ、あたしに興味をもってくれた。
そんな
名前を聞かれたとゆう
些細なことで舞い上がって
嬉しくなって
今にも倒れてしまいそうなあたし。
あたしってこんな
小さなことで幸せになれるんだっけ?

