それは、あまりに
近すぎる距離。
微かな息が
あたしの鼻先を掠める。
それぐらい近すぎる距離。
「え」
あたしの体は一瞬にして硬直する。
そんなあたしを見て
男の子はにっこり笑う。
「ごめん、顔近すぎた」
そう言ってクスクス笑いながら
男の子はあたしから離れて
道場の電気をつけた。
え、え、え、え、
嘘。
な、なんで
この男の子がいるの?
さっきとは違う意味で心臓がうるさい。
「あれ?中、入りなよ」
不思議そうにあたしのことを眺めて
綺麗な手をあたしに差し出してきた男の子。
「あ、はははは、入ります………」
ドキドキと喉から出てきそうな心臓を
必死に抑えながら
あたしは差し出された男の子の手を握る。
ああ、どうしよう。
あたし、手、汗ばんでない?
震えてない?
緊張してるのばれてない?
ああ、もう。
頭が、頭がテンパって
おかしくなってしまいそう。

