「同じだけ好きで居てくれなくても、憂梧くんがくれた言葉にわたしは勇気をもらったから」


そう言って口止めする雨花に、航平は何も言えなくなったと言う。


……俺の言ったどの言葉が雨花を勇気づけたのか。


真実を知っても変わらず優しくしてくれた彼女を、騙して利用して捨てて……。

……俺は雨花を傷つけてばかりだったのに。


「別にさ、おまえが晴奈ちゃんと居て幸せならそれで良いって思ってる。モチロン鬼畜計画のことは、深く反省して欲しいけどな」


「わかってる……。二度と自分の勝手で人を傷つけたりしない、絶対」


別れを切り出した俺に、最後まで雨花は好きって言ってくれた。


それなのに今まで通りなんて……自分を取り繕う為の狡い言い方だ。


雨花の大好きの隙を利用した狡い自分も、優しい雨花なら許してくれるなんて……心のどこかに甘い考えがあったんだ。


最後に見せた泣きそうな顔は、本当は沢山傷ついて、沢山泣いた後の顔だったのかもしれない。


もし……こんな俺にもチャンスが残ってるなら、許される自分じゃなくて、雨花に釣り合う自分になりたい。


そんな気持ちが心の底からジワジワと湧き上がってくる。


雨花が優しくしてくれたみたいに優しくしたい。

雨花が好きって言ってくれたみたいに好きって返したい。


……もう一度、雨花が俺に笑いかけた顔が見たかった。