廊下で立ち尽くしていた俺を不思議に思ったのか、軽く首を傾げた汰一が俺の向けていた視線の先を追いかける。
教室で盛り上がる雨花たちを見て、
「へぇ~なんかお似合いだよな。如何にも優等生同士って感じで」
同意を求めるように言われた言葉に、思わず目を逸らして口を噤んでしまった。
……適当に頷いてれば良かったのに、何故かそれが出来なかった。
そんな俺の気持ちなんて知る由もなく。
「ま、憂梧には晴奈ちゃんが居るもんな。おまえらもお似合いじゃん」
付け加えられた言葉は自分が望んだ展開なのに、全く俺の中に浸透してこなかった。
更に汰一の口は滑らかになっていき、
「小西さんってイイコだけど……地味だし盛り上がりに欠けるっていうか大人しいっていうか……。彼女にするには物足りなさそうだもんな~だから別れたんだろ?」
汰一の語る雨花のイメージに、口をついて出そうになった言葉をぐっと飲み込んで、また口を噤んだ。
「……そう、だな」
……地味で大人しくても、雨花は純粋で優しくて一途だ。
雨花のことを知らない癖に見た目だけで判断して、勝手なコトを言う汰一に咄嗟に反論しそうになった自分に驚いた。