「憂ちゃん、本当にそれで良いの?」

「当たり前だろ。俺が好きなのは、晴奈ちゃんなんだから」


気持ちに応えられないなら、このまま忘れさせてあげるのが一番良い。

頭では納得したはずの言葉が、何故か心の片隅に引っかかる。


「……目に見えることだけが全てじゃないんだよ」

「……なんだよ、それ」

「憂ちゃんのことを好きで居てくれて、何の見返りがなくても大切に想ってくれる人が居るって幸せなんだよ」


静かな声で諭すように呟いた姉貴の言葉が、頭に貼り付いて離れなくなる。

言わんとしてることはわかるけど、今の俺にはそれがどういうことかピンと来なかった。

「……」

「晴奈ちゃんって子も、そういう子だと良いわね」


こう言って小さく笑った顔は、なんだか諦めのようにも見えて、俺はそれに黙って頷くことしか出来なかった。