「それで。その好きな子のどんな所が雨花ちゃんより良いの?」


俺の答えを聞いた姉貴は正面の椅子に座ると、真剣な表情を崩さないまま静かに尋ねてくる。


「……遊んでて楽しいし、見た目も可愛い」

「それだけなの?」

「な、なんだよ……」


姉貴の表情は真剣なのを通り越して、なんだか怖い……。

いつもと打って変わって、言葉少なに俺の話を聞いていたかと思えば、


「はぁ……憂ちゃんがここまで薄っぺらいなんて……。こんな男、雨花ちゃん別れて正解だわ」


盛大な溜め息と共に呆れ切った声で吐き捨てるように俺を罵倒する始末。

腕も足も組んで更に大きな溜め息を吐く姿は、これでもかってくらい態度が悪い。

まさか雨花の肩を持つとは思わず、

「ど、どういう意味だよっ!」

その態度の悪さも相俟って腹が立ったから負けじと声を上げれば、


「見た目が可愛いなんて理由で、優しくしてくれた女の子と別れちゃう男なんて薄っぺらいって言ってるの!」

「……うっ」


何とも言い返せないくらい真っ当なことを言われて、思わず口を噤んでしまった。

母親が出張中の間に代わりにご飯を用意してくれる優しい彼女。
一瞬しか会ってないけど、あの状況を見て少なくとも姉貴にはそう映っていたらしい。

それがあながち外れていないから、俺も何とも言えなくなる……。