このまま泣かれたりしたらどうしよう。
航平たちと最後まで優しくするって、泣かせないって約束したのに……。


今となっては関係なくなったはずの約束が、こんな時になって頭をよぎる。


さっきから表情の戻らない雨花を残して立ち去ることも出来ず、


「でも、雨花のことが嫌いになったってワケじゃないから。出来ればこれからも今までどおりにして欲しいんだけど……」


今の俺に出来る限りの精一杯のフォローを必死に伝えれば、


「ううん……」


今まで見た中で一番悲しい笑顔で笑って、雨花は首をふるふると横に振ってみせた。


優しい雨花なら頷いてくれるだろうなんて思っていた俺は、自分の浅はかさにも気付かず呆然としてしまう。


そして、


「憂梧くんがわたしのこと好きじゃなくても……わたしは憂梧くんが好きだから、今までどおりには出来ないよ……。ごめんね」


今にも泣いてしまいそうな震えた声でこう告げると、そのままそそくさと教室から飛び出して行ってしまった。


俺の方を一度も見ることなく……。