「……ありがとう」


さっきまでカチカチだった体の緊張が徐々に緩まって、おなか辺りに回してた俺の手に自分の手を重ねた雨花がちらりとこちらを振り返ってはにかんだ。


その笑顔に不覚にも胸がドキッとしてしまうなんて……思ってた以上に雨花に情が湧いてしまってるのかもしれない。


ヤバイな……このままじゃ罪悪感に負けてしまいそうだ。


だから俺は強硬手段に出ることを決める。


視線をテレビに戻そうとしていた雨花の顎を片手でつかみ、


「俺のこと好き?」


唇が触れてしまいそうなくらいの距離でこんなことを囁くのは卑怯だと思う。


だって、


「うんっ。大好きだよ」


真っ赤になった雨花が絶対こう答えるってわかってて。
雨花がこう答えたら拒否できないってわかってて、それに付け込んでキスしようとしてるんだから……俺はズルイ。


全身が緊張で強張って雨花の手がギュッと俺の制服の裾を握った。


そのまま唇に触れたら微かな熱と小さな震えが伝わってくる。


でも、震えはすぐになくなって……雨花に受け入れられたんだって思ったら、それだけで体中が満たされていくみたいな気分になった。