いきなりなんの前触れもなく抱きしめられた雨花は、

「ゆ、憂梧くんっ?」


緊張で上ずった声で俺の名前を呼んで、もっと体を硬くさせていた。
そのあたふたと慌てる様子に心がくすぐられて、なんとも言い難い感情が湧き上がってしまう。


「……可愛い」


「えっ!!」


俺の呟きに雨花が大きな声をあげて驚いてる。

でも、ビックリしてんのは雨花だけじゃない。

……思わず頭に浮かんだ本音が無意識に口から出てて自分でもビビッた。


確かに。
ここに雨花を連れて来た目的は体の距離を縮めてしまうことだったけど……。


こんな感情任せに抱きしめたりするつもりなんて、さらさらなかったんだ。


「いつ怖いシーンになるかわかんないし」


なんて言い訳はこのDVDを一緒に見ようと画策してたときから、雨花が怖がってたら使おうと考えてたセリフ。


う言って雨花を抱きしめて、あわよくばキスの一つくらい出来るムードに持っていこうと思ってたのに……。