だいすきのすき


さっきから怒ったり慌てたり……。
雨花がこんなに表情をコロコロと変えるのがなんか新鮮だ。


まぁ、雨花本人は言われたくないこととか言われて災難だけど。



だから次の日の帰り道で。

昨日の晩ご飯のお礼を言った俺に、


「うるさくてごめんね。うちの家族みんなお喋りで……」


こう言って溜め息をこぼす雨花がちょっと気の毒だった。
……彼氏の前で料理下手なんて言われたくないことだろうしな。


「でも楽しかった。家であんなに賑やかにご飯たべることないから」


「そうなの?」


「小学生の時に親が離婚してるから、母親は今の時期は出張とかで忙しくて帰ってこないし。たまに姉貴が来るけど結婚してるから家庭があるし、兄貴は一人暮らしだし。だから家に居るのは俺くらい」


淡々と説明する俺を雨花はちょっと驚いたように見つめている。


両親が居て兄弟が居て……。
そんな普通の家庭に育ってるヤツからすれば珍しいことなんだろうな。


でも、俺にはずっとこれが当たり前になってるから、特別どうとは思っていない。
こんな反応されるのも慣れてる。