雨花にお返しのクッキーを貰って三日ほど経った日のこと。
いつもどおり雨花を家の途中まで送っていた時だった。
ホントは家の前まで送るって言ってるのに、
「憂梧くんが帰るのが遅くなっちゃうから」
って、お互いの家の別れ道までしか送らせてくれないんだよな。
どうせ、遅くなったって家には誰も居ないから気にしなくていいって言ってんのに……。
まぁ、そんなところも優しい雨花らしいって言うのはとりあえず置いといて。
いつもの別れ道の手前に差し掛かったところで、
「雨花~」
不意に後ろから雨花を呼ぶ声がして、俺たちは同時に後ろを振り返った。
振り返った先に居たのは、買い物袋を両手に提げた小柄な女の人で。
それが誰かを尋ねる間もなく、
「あら! もしかしてあなたが憂梧くん? 雨花がお世話になってます」
「お母さん!」
慌てる雨花を余所に、雨花の母親は愛想のいい笑顔を浮かべながらぺこりと俺に向かってお辞儀をして見せた。

