そのまま雨花を途中まで送っていた道中。
「でも、ホントに貰っちゃっていいの?」
「なんで?」
通学用のカバンから真新しいブックカバーの付けられた文庫本を取り出しながら、雨花は上目に俺の表情を窺っていた。
その顔はどことなく申し訳なさそうで。
その表情の理由を尋ねる俺に、
「だって、勉強をがんばったのは憂梧くん自身だし……。それに」
「ん?」
「憂梧くんが留年せずに済んだことが一番嬉しいから」
こう言ってにこっと笑う雨花に、胸の奥が一気にこそばゆくなった。
なんつーか……とことんお人好しっていうか、優しくてイイ子だな。
まじりっけの無い好意を向けてくれている雨花に、この調子で優しくしていけば案外さっさと心も体も許してもらえるかも……? なんて思ってた下心がちくりと罪悪感で痛んだ気がした。

