放課後。
さっさと人気が出払った教室で、自分の席に座ったまま文庫本を読んでる小西さんを見つける。
文庫本には憂梧の下心を具現化した可愛らしいブックカバーがつけられていた。
晩ご飯にお呼ばれしたこととか憂梧の話を聞いてると、小西さんは憂梧のことをなんだか好きなように思えてくる。
だったら尚更傷は浅いうちに別れるべきだ。
そう思い立って、
「小西さん」
俺は彼女の名前を呼んだ。
いきなり何の接点もない俺に呼び掛けられて、
「…………?」
小西さんは文庫本を閉じて不思議そうに俺の顔を見つめてきた。
「小西さんに話があるんだ……憂梧のことで」
憂梧の名前を聞いて納得したのか、小西さんは体の向きを俺に合わせて話を聞く姿勢をとる。
小さく笑って首を傾げ、俺が話し出すのを待つ小西さんを見てるとやたらに緊張した。
だって今から俺は、彼女を傷付けてしまうんだから……。

