ようやく巡ってきたチャンスが無くなってしまわないかと、内心でヒヤヒヤさせられる。


そんな俺の耳に、


「原口くんと若菜くんにこの前のプリントを提出するように伝えて貰えないかしら?」


自分の名前が飛び込んできて、思わずドキッとして心臓が小さく跳ねた。


しかし。
これで確実に雨花と話すチャンスが巡ってくる。


なんのプリントかなんてのはサッパリ思い出せないけど。

これで雨花の方から声をかけてくれれば、避けられずに確実に話すことが出来る。


なんて思った俺は、たいがい浅はかだと……自分でも思う。


「あの……わたし、若菜くんのこと苦手なので、スミマセン……」


声を堅くした雨花がこう告げるなり、来た道を足早に引き返して去っていってしまったのだ。


呆然と立ち尽くしていた先生の背中越しに、遠ざかる雨花の後ろ姿が見えた。


それが……別れ話をした時のモノと重なって、胸の奥がズキズキと痛んだ。


雨花にハッキリと拒まれた。


そのショックで全身から一気に力が抜けて、心が重たくて苦しくなる。


雨花にあんなことを言わせたのは、他でもない俺自身なのに……ショックでたまらなかった。