【舞花side】
月が暗い部屋に顔を出す。
「綺麗…」
つい本音をこぼしてしまった。
「舞花」
そう思っていると
少し低めな声が
後方から耳に入ってきた。
「いたんですね…
唯無、いきましたよ」
「そうか」
「やっぱりさみしいんですね」
私はクスッと笑った。
「…あぁ
舞花までいなくなったら…」
ふわっと優しいぬくもりとは
裏腹に強く力がこもっていた。
「大丈夫ですよ
私はここにいます
ってもう…だめですよ」
「わかってるくせに」
「ええ。私ですもの」
「ほんとかなわないな」
「ふふっ…
唯無も幸せになってくれると
いいですね」
「だな…
舞花も…悔いはなかったのか…?」
少し不安げに聞いてきた
「可愛いです
大好きですよ…樹様」
「ああ、僕もだ
…舞花。今夜は
優しくしてやれないからな」
「樹様も結構なさみしがり屋ですね」
「うるさい」
「ふふっ」
月の光が差し込む。
ここではまた恋人の花が咲き誇る。


