夢六
一元将雄は感慨深げに同級生たちの顔を見ている。高校卒業してから七年。長いようで短い歳月。時の流れは年年早くなって行くような気がする。皆随分変わった。特に女性軍は別人のように変身した人がいる。お母さんになった人の中には当時の面影が残っていても、体型がすっかり様変わりした人がいる。当時、先生も手を持って余した二人の悪ガキ同級生が立派な社会人になった。あたかも模範的な社会人になったことに驚いた。元ヤンキーが地味なOLに変身した。少しずつだが、皆前へ進んでいる。自分だけが変わっていない。イメージも体型もIQも精神年齢も昔のまま。全然進歩していない、と言われた。取り残されているような気がする。
一元は居酒屋で十人ぐらいの同級生と二次会で飲んでいる。この日は同級生高野美子の結婚披露宴に出席した後、久しぶりに会った同級生たちが二次会に行った。青春の一時をともに過ごした仲間たちと昔話に花を咲かすのは楽しいが、結婚していない同級生は男女ともデート中と聞くと、一元は一抹の寂しさを覚える。高校からいままで、彼女らしい彼女はいない。熱いデートもほとんどしなかった。なんのための青春か分からない、と嘆きたくなる。
「今日の美子ちゃんはきれいだった」鈴木紀子は夢心地のうっとりとした表情で言った。
「今日だけ」佐藤純一が鈴木に視線を投げた。
「今日だけではない。いつもきれい」鈴木が慌てて言い直した。
「今日もきれいだな。しかし、美子ちゃんには驚いた。お見合い結婚。今時にお見合い結婚する人いる?時代遅れと思わない」佐藤が首を傾げた。
「お見合いと言うけど、合コンみたいな感じ。合コンを集団お見合いと考えればいいんでしょう。お前のほうが時代遅れだ」吉田修が笑った。
「お見合いも恋愛もいいんじゃないか。結婚できればいいんだ。結婚していない人は早く相手を見つけること。奈々美ちゃん、いい男を紹介してあげようか」田中克也がビールのチョッキをテーブルに置いて八戸奈々美を見た。
「私のことはほっといて。まだ結婚したくないわ」八戸が口をとがらした。「いい男がいたら一元に紹介して」
皆がどっと笑った。
一元と八戸はアイドルも負けする容姿の持ち主。美男美女は高嶺の花と見られがちなのと、すでに好きな人がいると思われる。二人には高校の時から意外と浮ついた話しがない。二人はどっちが先に結婚するのか、とかける人もいる。八戸は明るくて積極的なタイプ。一元はわりと無口でおとなしい。いつころからかはか分からないが、互いに相手を天敵だ、と思っている。
「なにを言っている。俺はホモじゃない」一元が少し顔を顰めたような表情をした。
「いいじゃないの。付き合えばホモになれる。一元君は昔からホモ気があった」
皆がまたどっと笑った。
「俺はホモになりたくない。奈々美ちゃんのほうが男が必要ではないのか。早く結婚しないと負け犬になる」
「私は独身主義。変な人と結婚するよりも一人で暮らしたほうがいいわ」
「結婚しなければ分からないのではないか」
「分かるの。一元君を見れば分かる」
爆笑。
「なにを言っている。俺こそ奈々美ちゃんを見て結婚したくなくなった」
「言われたことを言うんじゃないわ」
「前からそう思っている」
「前からそう思っている!私のほうが前から一元君は変態、と思っていたわ」
「俺が変態なら、あなたは 。 。 。 エー 。 。 。 異常」
「あなたたち、やめなさい」石田奈津実はそう言いながらも笑いを堪えられない。「二人で漫才をやったら」
「この人と?いやだ。一人でやれる落語のほうがいいわ」八戸がオーバーに苦々しい顔をした。
「俺のほうが勘弁してもらいたい」一元も大げさに反応した。
「この二人は中学校の時からこういう調子ですか」松山仁美も二人の漫才風なやりとりに噴き出した。松山と二人は高校の同級生。二次会出席者の中には二人の小学校と中学校の同級生もいる。
「中学校からではない。小学校の時から漫才をやっていた。名コンビ。息がぴったり。やっぱり一緒に漫才をやったほうがいい」二人と小中高とずっと同じだった佐藤は二人のことをよく知っている。
「これはひょっとしたら漫才風の恋人喧嘩」松山の頭の中をふとそんなことが過ぎった。
「冗談じゃないわよ」八戸が膨れ面をした。
「そんなことは絶対にありえない」一元は何回も強く首を横に振った。
「世の中に絶対的なものは絶対にない」坂本剛が悟ったような言い方をした。
「俺がありえない、と言ったらありえない」一元は語気を強めた。
「一元と八戸は名前の頭文字を並べると一八になる。イチかバチか。運を天に任せる意味。二人は運命のカップルかもしれない」坂本が分けの分からない理論を並べた。
「あほらしい」八戸はバカくさくて聞いていられない表情をした。
「俺は占いを勉強したことがあるから分かる」
「本当ぉー?」内藤雅美は意外そうな声を上げた。「私の運命を占って」
「やってもいいけど、結構飲んだから頭がボッウトしている」
「本当は分からないでしょう」
「分かる。ただ今酔っ払っているから頭がうまく回転しない」
「雅美ちゃんは本当に単細胞。だから騙されやすい」八戸が口を挟んだ。「分かるわけがないでしょう。坂本君、自分のことを占ったら。結婚はいつ」
「他人のことはよく当たるが、自分のことは分からない」
爆笑。
一元将雄は感慨深げに同級生たちの顔を見ている。高校卒業してから七年。長いようで短い歳月。時の流れは年年早くなって行くような気がする。皆随分変わった。特に女性軍は別人のように変身した人がいる。お母さんになった人の中には当時の面影が残っていても、体型がすっかり様変わりした人がいる。当時、先生も手を持って余した二人の悪ガキ同級生が立派な社会人になった。あたかも模範的な社会人になったことに驚いた。元ヤンキーが地味なOLに変身した。少しずつだが、皆前へ進んでいる。自分だけが変わっていない。イメージも体型もIQも精神年齢も昔のまま。全然進歩していない、と言われた。取り残されているような気がする。
一元は居酒屋で十人ぐらいの同級生と二次会で飲んでいる。この日は同級生高野美子の結婚披露宴に出席した後、久しぶりに会った同級生たちが二次会に行った。青春の一時をともに過ごした仲間たちと昔話に花を咲かすのは楽しいが、結婚していない同級生は男女ともデート中と聞くと、一元は一抹の寂しさを覚える。高校からいままで、彼女らしい彼女はいない。熱いデートもほとんどしなかった。なんのための青春か分からない、と嘆きたくなる。
「今日の美子ちゃんはきれいだった」鈴木紀子は夢心地のうっとりとした表情で言った。
「今日だけ」佐藤純一が鈴木に視線を投げた。
「今日だけではない。いつもきれい」鈴木が慌てて言い直した。
「今日もきれいだな。しかし、美子ちゃんには驚いた。お見合い結婚。今時にお見合い結婚する人いる?時代遅れと思わない」佐藤が首を傾げた。
「お見合いと言うけど、合コンみたいな感じ。合コンを集団お見合いと考えればいいんでしょう。お前のほうが時代遅れだ」吉田修が笑った。
「お見合いも恋愛もいいんじゃないか。結婚できればいいんだ。結婚していない人は早く相手を見つけること。奈々美ちゃん、いい男を紹介してあげようか」田中克也がビールのチョッキをテーブルに置いて八戸奈々美を見た。
「私のことはほっといて。まだ結婚したくないわ」八戸が口をとがらした。「いい男がいたら一元に紹介して」
皆がどっと笑った。
一元と八戸はアイドルも負けする容姿の持ち主。美男美女は高嶺の花と見られがちなのと、すでに好きな人がいると思われる。二人には高校の時から意外と浮ついた話しがない。二人はどっちが先に結婚するのか、とかける人もいる。八戸は明るくて積極的なタイプ。一元はわりと無口でおとなしい。いつころからかはか分からないが、互いに相手を天敵だ、と思っている。
「なにを言っている。俺はホモじゃない」一元が少し顔を顰めたような表情をした。
「いいじゃないの。付き合えばホモになれる。一元君は昔からホモ気があった」
皆がまたどっと笑った。
「俺はホモになりたくない。奈々美ちゃんのほうが男が必要ではないのか。早く結婚しないと負け犬になる」
「私は独身主義。変な人と結婚するよりも一人で暮らしたほうがいいわ」
「結婚しなければ分からないのではないか」
「分かるの。一元君を見れば分かる」
爆笑。
「なにを言っている。俺こそ奈々美ちゃんを見て結婚したくなくなった」
「言われたことを言うんじゃないわ」
「前からそう思っている」
「前からそう思っている!私のほうが前から一元君は変態、と思っていたわ」
「俺が変態なら、あなたは 。 。 。 エー 。 。 。 異常」
「あなたたち、やめなさい」石田奈津実はそう言いながらも笑いを堪えられない。「二人で漫才をやったら」
「この人と?いやだ。一人でやれる落語のほうがいいわ」八戸がオーバーに苦々しい顔をした。
「俺のほうが勘弁してもらいたい」一元も大げさに反応した。
「この二人は中学校の時からこういう調子ですか」松山仁美も二人の漫才風なやりとりに噴き出した。松山と二人は高校の同級生。二次会出席者の中には二人の小学校と中学校の同級生もいる。
「中学校からではない。小学校の時から漫才をやっていた。名コンビ。息がぴったり。やっぱり一緒に漫才をやったほうがいい」二人と小中高とずっと同じだった佐藤は二人のことをよく知っている。
「これはひょっとしたら漫才風の恋人喧嘩」松山の頭の中をふとそんなことが過ぎった。
「冗談じゃないわよ」八戸が膨れ面をした。
「そんなことは絶対にありえない」一元は何回も強く首を横に振った。
「世の中に絶対的なものは絶対にない」坂本剛が悟ったような言い方をした。
「俺がありえない、と言ったらありえない」一元は語気を強めた。
「一元と八戸は名前の頭文字を並べると一八になる。イチかバチか。運を天に任せる意味。二人は運命のカップルかもしれない」坂本が分けの分からない理論を並べた。
「あほらしい」八戸はバカくさくて聞いていられない表情をした。
「俺は占いを勉強したことがあるから分かる」
「本当ぉー?」内藤雅美は意外そうな声を上げた。「私の運命を占って」
「やってもいいけど、結構飲んだから頭がボッウトしている」
「本当は分からないでしょう」
「分かる。ただ今酔っ払っているから頭がうまく回転しない」
「雅美ちゃんは本当に単細胞。だから騙されやすい」八戸が口を挟んだ。「分かるわけがないでしょう。坂本君、自分のことを占ったら。結婚はいつ」
「他人のことはよく当たるが、自分のことは分からない」
爆笑。
