301号室、302号室、303号室





それから彼女は、昨晩の出来事を、順を追って、事細かに説明し始めた。



居酒屋のカウンター席で一人、泥酔した僕と出会ったこと。


そこで意気投合し、もう一軒、飲み屋に行ったこと。


その後、終電がなくなり、僕が彼女を家に連れ込んだこと。


そして、そのままの勢いで・・・してしまったこと。



その話を聞いて、なんとなく、彼女と出会うまでの記憶は甦った。



そうだ。


僕は昨日、仕事でむしゃくしゃして、それで、翌日休みなのを良いことに一人やけ酒に走ったんだ。

酒なんか、ろくに飲めないくせに。

いつもはビール一杯で真っ赤になるところを、昨日は何杯飲んだというのだろう。

それに関しては、恐ろしくて、思い出したくもない。



「・・・ありがとうございます、なんとなく、思い出せました、昨日のこと」


「じゃあ私が昨日、居酒屋でした話は、覚えてる?」


「え、話・・・ですか?」


「・・・あ、覚えてないならいいの、べつに」



彼女は首を小さく振った。

また、寂しそうな顔・・・
やっぱり、少し、気になる・・・・

こういうとき、さりげなく話を聞き出せるほど、器用だったらなあ。

そしたら、少なくとも今よりまともな人間に、なれていたのかもしれないのに。



・・・って、あれ?


何で僕がこの人に気遣って、自分までへこんでるんだ?

昨日までは知らなかった、あかの他人じゃないか。

確かに、酔った勢いとはいえ、まずいことをしたとは思ってる。

けど・・・・

僕がこの女の心配をするような義理はない。



今の僕には、それより他に、もっと大事なものがある。