それから彼女は、昨晩の出来事を、順を追って、事細かに説明し始めた。
居酒屋のカウンター席で一人、泥酔した僕と出会ったこと。
そこで意気投合し、もう一軒、飲み屋に行ったこと。
その後、終電がなくなり、僕が彼女を家に連れ込んだこと。
そして、そのままの勢いで・・・してしまったこと。
その話を聞いて、なんとなく、彼女と出会うまでの記憶は甦った。
そうだ。
僕は昨日、仕事でむしゃくしゃして、それで、翌日休みなのを良いことに一人やけ酒に走ったんだ。
酒なんか、ろくに飲めないくせに。
いつもはビール一杯で真っ赤になるところを、昨日は何杯飲んだというのだろう。
それに関しては、恐ろしくて、思い出したくもない。
「・・・ありがとうございます、なんとなく、思い出せました、昨日のこと」
「じゃあ私が昨日、居酒屋でした話は、覚えてる?」
「え、話・・・ですか?」
「・・・あ、覚えてないならいいの、べつに」
彼女は首を小さく振った。
また、寂しそうな顔・・・
やっぱり、少し、気になる・・・・
こういうとき、さりげなく話を聞き出せるほど、器用だったらなあ。
そしたら、少なくとも今よりまともな人間に、なれていたのかもしれないのに。
・・・って、あれ?
何で僕がこの人に気遣って、自分までへこんでるんだ?
昨日までは知らなかった、あかの他人じゃないか。
確かに、酔った勢いとはいえ、まずいことをしたとは思ってる。
けど・・・・
僕がこの女の心配をするような義理はない。
今の僕には、それより他に、もっと大事なものがある。

