「そうだよね・・・ごめんね、変な質問して」



そう言いかけた、そのときだった。



「中村さんは、特別です、から」



そう、確かに、聞こえた。
耳に、入った。

いつものクールな口調とは違う、不器用な声で。

また、顔、反らされた。

けど、なんとなく分かってきた。
彼は、照れたときや、何かを誤魔化すとき、目を反らす。

そっぽを向いた彼の肩を掴む。

さっき、散々ドキドキさせられた、お返しだ。



「ねえ三木くん、特別って、どういう意味?」


「なんでもないです、一刻も早く忘れてください。」


「ねえ、気になるんだけど」


「気にしなくていいですから。」


「なんで教えてくれないの?」


「・・・だから、触るのとかも・・迷惑なんで・・・」



自分だってさっき、私の顔とか、平然と触ってたくせに。

でも、さっきまで上からだった三木くんが、徐々に余裕を無くしていく様子が面白くて、私は更に彼に迫る。

だって、嫌われてないなら、それは、喜ぶべきことだと思うから。



「こっち向いてよー、三木くーん!」


「嫌です。死んでも絶対向きません。」



しかし、彼は私を上回る頑固者だ。
掴んだ肩を引っ張っても、少しも動かない。

そんなに、嫌なのか・・・

私は手を離し、もう、何かを言うのもやめた。
黙ってお皿に残ったリゾットを食べ始める。

・・・もう、いいや、疲れたし。



「やっと、諦めてくれましたか」


「うん・・・特別だって言われて、私ばっかり舞い上がってたみたいだし・・・しつこくして、ごめんね」



内心はまだ、もやもやしている。

ようやく少し、彼のことが分かり始めたと思ったのに。

また振り出しに戻った感じだ。



「ずるいよ、三木くんは。急に距離詰めたかと思えばまたはぐらかして・・・そんなの、気にならないわけないって。」


「・・・・・ズルいのは、どっち?」


「え?」