きっとあの日の夜も、そうやって、恵美ちゃんのことを誘ったんだ。
ただ、自分の欲望を満たすためだけに。



「勘違いしてくれたんですか?中村さんは」



そうやって、シニカルに微笑む。

だから、そういうところが思わせ振りなんだ。
私はなんとか騙されずに気持ちを保てているけど、中には絶対、コロッと落ちてしまう子だっているはずだ。

それくらい、掴み所のない、背筋がゾクッとするような笑顔だった。

こんなんだけど、笑った顔、初めて見たかも・・・。



「わ、私のことじゃなくて・・・恵美ちゃんとか・・多分、三木くんが自分のこと好きだって、勘違いしてると、思うよ」


「あれは、したいって向こうが言うから、仕方なく抱いただけです」



また、偉そうに。
そんなことを言って許されるのは、顔の整った人間だけだ。

それに・・・



「私はべつに、三木くんに何かしてほしいなんて、お願いしてないよ」


「でも、中村さんは、俺がしたことに勘違いしてくれたんですよね?」



墓穴掘った。

でも、べつに勘違いなんかしてない。
自惚れてもいない。

ただ、不覚にもドキドキしてしまっただけだ。
まさか自分が、こんなに浮気性だったなんて。
こんなんじゃ、亮太に文句を言う資格もない。



「違う、私は・・・亮太がいるから・・・そんな余計なこと、考えない・・・」



そう私が口にすると、余裕綽々だった三木くんの顔が、一瞬強張った。